2013年3月31日日曜日

地域のブランディング


ある企画がきっかけで「地域のブランディング」について、深く考えることになりました。簡単に答えが出る話でもないので、まだまだ思考中ですが、備忘録として。

原石は、いつも足元にある。
風で木の葉が揺れている姿を見ているかのように、当たり前すぎて気づかない。その地域ならではの良さがあっても「うちの地域は何もない」とついつい言ってしまう。そのような無意識の謙遜の中に、地域の魅力が埋もれているように思います。

都会と比べて「便利さ」は足りないかも知れませんが、どんな土地でも、個性はあります。その土地で暮らす人が当たり前すぎて気づかない独自性こそ、地域を発信するうえでの「原石」となり得ます。

地域は、日本の資源である。
日本各地は決して金太郎アメのように同じではなく、景観や特産品など、それぞれ個性を持っています。日本では、高度経済成長期を経て「都会への憧れ」が強くなったように思いますが、田舎であることに誇りを持つこと。まず、その意識を取り戻すことが最も大切だと思います。

海外では、田舎でもその地域に誇りを持って暮らす人が多いと聞きます。まず誇りを持つことで、自分たちの個性に気づき、地方から独自の文化やムーブメントを発信する人が増え、日本全体の魅力が多発的に形成されると感じています。

まずは東京ではなく、いきなり世界へ。
たとえば、地方の特産品を売ろうとした時に、これまでの時代は、まず人口の多い都会への販路拡大を目指すのがセオリーでした。東京で売れ、世界を目指すというステップがあったように思えます。しかし、世界中どこでも瞬時につながるインターネットの発達や新しいサービスの拡大で、これからは、いきなり世界を目指すことのハードルがさらに下がります。地域→世界→東京、といった逆輸入的な売れ方が主流になっても、不思議ではありません。

その人がいなくなったら、困る。
結局、地域にはおいては「人」が一番の資源です。都会ではすぐに代わりの人が見つかるかもしれませんが、地方ではなかなかそうはいきません。甲子園常連校にはエース級のピッチャーがたくさんいるのに、普通の野球部にはエースは1人しかいないようなものです。地域をブランディングする上では、意志を持ってチャレンジをする人が、どれだけつながり、化学反応を起こすか、そこに地域力を高める鍵があると感じています。
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と、雑感を綴りましたが、これらを踏まえた新しい動きを、今年度中にスタートできるかもしれません。今からワクワクしています。また進展あれば、ご報告します。

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2013年3月23日土曜日

デザインの背景に「配慮」あり

日経デザイン4月号。特集は『リニューアルの極意』です。ブランドを一から立ち上げることが「新築」だとしたら、リニューアルは「リフォーム」。リフォームと同様に、すでに柱の位置(市場でのポジション)などが決まっているので、デザインを慎重に行わなければなりません。
カルビーの「フルグラ」。どこがリニューアルしたか分かりにくいですが、2009年(右)から2011年(中央)にかけて、商品名をリニューアルしています。フルーツグラノーラを「フルグラ」としたことで、圧倒的に呼びやすくなり認知もされやすく、売上が1.6倍になったそうです。要因はこれだけではないと思いますが、商品のネーミングは、戦略のひとつだと言えます。 ポイントは、2011年の時点で、フルーツグラノーラの既存の顧客がかなりいたと思われるので、新パッケージで顧客が迷わないように、デザインは多少の変更にとどめたことでしょう。
こちらは、Fits。これでもかというぐらい(毎年1回以上)パッケージをプチリニューアルしています。一見ムダな投資に思えますが、そこには戦略があります。Fitsの中心顧客層は、10代後半〜20代前半。若い世代をターゲットにしているだけに、「そんなガムが流行ったね」と、すぐに飽きられてしまう危険性があります。その対策として、パッケージを常に変化させることで“アクティブ”な印象を発信でき、若い世代を飽きさせないという戦略があるようです。

以前、小山歯科医院さんの記事で書きましたが、リニューアルのデザイン提案では、これまでの歴史や意志をしっかりと汲む必要があります。その上で、プラスアルファの要素を組み入れる。そのような繊細なスキルが求められると感じています。

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2013年3月17日日曜日

住建太子光|パンフレット


「実直」という言葉がぴったり当てはまるような、律儀で誠実な大工さんからのご依頼。磐田市の「住建太子光」さんのパンフレットをデザインさせていただきました。
初めてお会いしたときの生真面目な印象、仕事に対する真摯な姿勢から、デザインは、おのずと「余計な装飾をせず、誠実なイメージが伝わるもの」に、方向性を定めました。なにしろ写真から伝わってくる「丁寧な手仕事」が、まっすぐ伝わるべきだと感じたからです。
紙面は、写真とコピーのみで構成。「大工はやっぱり工夫すること。ただ作るだけじゃないんです。」と語っていた言葉が印象的で、「作るよりも、創るが信条」というキャッチコピーが、打ち合わせ後にすぐに浮かびました。仕事する上で大切にしている「信念」をお話いただき、それらを4つのキャッチコピーに落とし込みました。



特に気をつけたのは、文章の量。伝えたい思いが強すぎると、つい長文になってしまいがちですが、「文字のかたまり」が「全体の印象」を邪魔しないように、短く伝えることが大切です。あれも伝えたい、これも伝えたい、と文字が多くなりすぎると、何を伝えたいのかよく分からなくなり、読んでもらえなくなる可能性が高まるからです。
こうして第三者として客観的に「思い」をつむぐこと。最適な言葉を選ぶことこそが、コピーライターとしての役目だと日々感じています。「編集する」とは、まさに「言葉を編む」ことなのです。

パンフレットが完成してまだ2ヶ月ですが、さっそくパンフレットを目にした方から、新規のお仕事がいくつかお問い合わせあったそうで、制作者としても嬉しいご報告をいただきました。こうした「丁寧な手仕事」ができる職人さんが、少しでも多く活躍できる世の中になってほしいですね。今後のご活躍をお祈りしています。

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2013年3月10日日曜日

チャレンジを応援し、失敗を讃える文化

Googleの日本法人・元社長を務め、ソニー在籍時には「VAIO」などのヒット商品を世に生み出してきた実績をもつ、辻野晃一郎さんのセミナーを聴講してきました。これからの日本に不可欠な要素を、グローバルな視点から語っていただき、普段から自分でも意識していることや、新たなに学んだこともあったので、いくつか記しておきたいと思います。

再定義することで、世界を変える
これまで「当たり前」とされていたことが、崩壊しつつある時代です。業界の常識や雇用における終身雇用制など、今後10年でガラリと価値観が変わるであろうことは、数えきれないほどあります。そして、そのほとんどは、社会に対する問題意識が高く、行動力がある人たちによって、時代に合った価値観へと「再定義」されることでしょう。

世界をリードするシリコンバレーに限らず、世界中の起業家が、新しいサービスで世の中を再定義し始めているそうです。僕も普段から、どんな案件でも常識にとらわれず、まずは0から自分の頭で考えることを基本としていますが、「デザイン業界の再定義」をさらに意識して推し進めたいと感じました。

10年前より、10倍速いスピード感
インターネットの登場で、ワンクリックで地球の裏側まで瞬時につながる時代が到来し、ビジネスのスピードは、飛躍的に高まりました。しかし、日本では、そのスピードに対応できていない企業が、まだまだ多いのが現状です。

たとえば、担当者が商談に来た場合、その場で決裁するのが先進国のスタンダードなのに対して、「一度社に持ち帰って、上司に相談して、それから稟議にかけて・・・」なんて日本だけだと、辻野さん。そういえば、シリコンバレーで働く自分の兄も、全く同じことを言っていたのを思い出しました。アメリカの1週間が、日本の1ヶ月かそれ以上だとしたら、その遅れによる「チャンスの損失」は測りしれないですよね。

スマホと携帯電話、メールとFAXなど、ビジネスツールの世代交代は、これからも止まることはないでしょう。ますます即断力が試される「リアルタイム化」が進むはずです。僕のブランディングという仕事においても、(初めは驚きましたが)FacebookメッセージやLINEでご相談が来ることもあり、そのままフラットなコミュニケーションで仕事のやりとりをすることが、最近では増えてきています。何でもやみくもに速ければいい、という訳ではありませんが、スピード感はを常に意識することが大切だと思います。

チャレンジを応援し、失敗を讃える文化
変わっていくことを、楽しいと思うか、辛いと思うか。日本で「変わっている」というと、ネガティブにとらわれがちです。しかし、これからの時代は、変わらなければなりません。そのためには、たとえ小さくてもチャレンジが必要であり、それを後押しする応援するムードも必要です。

サッカーと同じで、アウェーだと本来の力が発揮できないし、多くのサポーターの声援を受けるホームでは、気持ちよくプレーできるものです。チャレンジする人を快く応援する。たとえ失敗しても、その勇気を讃えること。これからの日本はそのような土壌になって欲しいし、自分も意識して、自分より若い世代のチャレンジを応援していきたいと改めて思いました。

辻野さんは、グローバルな視点を忘れないように、宇宙から見た地球の写真を、常に見えるところに掲げているそうです。グローバルな視点、これからの自分を進化させていく上で欠かせない要素であることは、間違いありません。ちょうど模索している企画にとってヒントになることが聞けたので、今後に活かしていきたいと思います。

最後に、静岡で辻野さんのような著名な方のお話を聞けることは、大変ありがたいことです。このようなセミナーを企画してくれたNPOサプライズの飯倉さん、本当にありがとうございました。

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2013年3月3日日曜日

独立して、見えてきたもの

いよいよ、カギヤビルの事務所が使えるようになったので、自宅と同じような環境で仕事ができるように、パソコン関連の機器を揃えました。独立してまもなく半年になろうとしています。ひとつの小さな節目に、半年間で感じたことを、4つほど綴りたいと思います。

「自分」という経験は、つながっている。
転職や起業をすると、履歴書上では「キャリア」に区切りがつきます。職務経歴書に、〇〇年〜〇〇年とか、書きますよね。仕事に対して一区切りあるように感じます。しかし、ひとつひとつの経験が、「自分」の中では、すべてつながっているのです。たとえば僕の場合は、2002年〜2004年の間は、自動車を販売する営業マンでした。今の仕事とは無縁のように感じますが、そのときに100万円もの商品(車)を販売した経験は、今になっても確実に活きています。結局、どんな仕事をしていても自分の無意識の中で「線」でつながっているし、それが「オリジナリティ=個性」を生むのだと思います。

動くリスク、動かないリスク。
独立してからよく「独立なんてすごいね〜」と言われます。でも、何も特別すごいことはありません。。立場や仕事は違えど、どこで働いたって「働く」ということには変わりはないし、みんなそれぞれ大変ですよね。独立は確かに大きな動きなので、大きなリスクだと認識されやすいですが、その一方で、同じ会社に長くいてルーティーンが多くなってくると、「動かない=変化が少ない」という、見えないリスクもあるのです。まあどちらが正しいとかではなくて、人には向き不向きがあり、不確実な要素が高い分、楽観的な性格なほうが独立に向いているのかな、とは思っています。でも「動くリスク」は、変化を恐れずに行動することで回避できることもあるし、「変化=進化」ととらえれば、年齢を問わずに大きく成長できることも多々あると思います。

独りで立つと、支えが見える。
独立とは仕事上のことを指しますが、生活においては、家族や友人の支えがなくては成り立ちません。もちろん仕事においても、1人だけで進められることなんて限られていて、ときには、専門分野の方々のお力を借りることになります。支えがあるから楽しめるわけで、「自分が気持よく働けること」について、周囲への感謝が深まるばかりです。幸いにも独立してから多数のご紹介をいただくことで、これまで(まだ半年ですが)やってこれました。(あつかましく)皆さんこれからもよろしくお願いします。本当に感謝しています。

誰のせいにもできない、自分のせい。
僕はブランディングをする上で「アイデア」や「デザイン」というスキルを提供して、その対価をいただいています。自分の責任のもとに、依頼者のために全力で力になれるように知恵を絞り、手を動かし、お役に立てることしか考えていません。雇われていたときは、どうでしょう。「上司に言われたから」といって言われたことしかやらないほど従順じゃなかったですが(笑)主体的に動いていたつもりでも、どこか他人事に感じることもたまにありましたし、結局は組織に守られていたように思います。少なからず「甘え」はあったでしょう。今は直接感謝されるし、直接批判もされる。その責任が伴うことが、独立して働く緊張感となります。独立してからは、期待に応えることだけを常に考え、シンプルに動いています。また、その小さな積み重ねでしか社会の役には立てないと思っています。

さてさて、事務所も準備が整い、これからはさらに動きがある半年となりそうです。春が来て、夏が来れば、あっという間に設立1周年です。あ、そうそう、メインの職場は今と変わらず自宅となりますので、新事務所(カギヤビル)には週1〜2日ぐらいしか居ない予定です。気軽に立ち寄っていただくのは大歓迎ですが、事前にご連絡をいただいた方が確実かと思います。よろしくお願いします。

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