「旅館の清掃」をすると、その対価として「宿泊代が無料」になる。この取り組みを主催するNPO法人サプライズの飯倉さんから声をかけていただき、「ボランティア」と「観光」を引き換える『ボランツーリズム』に参加してきました。
場所は、落合楼村上旅館。伊豆の天城湯ヶ島温泉にある老舗旅館です。4000坪もの敷地に、わずか15室。金山で財を成した資産家が明治7年に創業し、昭和初期に金山を売却して建て替えたそうです。その建築費用は、現代に換算すると25億円にものぼるそうです。
そして、いよいよ清掃へ。108畳もある宴会場や廊下を20名ほどでキレイに仕上げていきました。電飾や窓ガラスなど、万が一にも割れた場合に、現代においては同じものが見つからないものもあり、とても慎重な作業となりました。
天井のすすを払い、窓ガラスのサッシを丁寧に吹き、最後はみんなで一列に並んで雑巾がけ。ここまででおよそ2時間ほどかかりました。
旅館に着くと落合楼のご主人、村上昇男さんが館内を約1時間かけて、じっくり解説をしてくれました。国の重要文化財である階段をはじめ、100年で3cmほどしか太くならない、樹齢およそ800年ほどの紫壇(しだん)の銘木を使った柱など、素材を見るだけでも凄みを感じる箇所が、館内のいたるところにありました。
そして、圧巻だったのは日本の伝統の技、組子細工(くみこざいく)。細部にわたり職人の手業が感じられ、釘や接着剤を一切使わずに、障子にはめ込まれています。200もの文様があるといわれる組子細工の中でも、最も難しいとされる技法を用いられた柄もあり、現代においては再現することすら容易ではないそうです。
そして、いよいよ清掃へ。108畳もある宴会場や廊下を20名ほどでキレイに仕上げていきました。電飾や窓ガラスなど、万が一にも割れた場合に、現代においては同じものが見つからないものもあり、とても慎重な作業となりました。
天井のすすを払い、窓ガラスのサッシを丁寧に吹き、最後はみんなで一列に並んで雑巾がけ。ここまででおよそ2時間ほどかかりました。
宴会場の清掃が終わると、各部屋の清掃へ。仲居さんたちが普段手が届かない高いところを脚立に乗って拭き拭き。磨き上げると経年変化にともなって飴色に変化した木の枠が、なんとも趣きのある光沢を放っていました。
清掃の説明のときに、仲居さんが「木を二度三度拭いてください。そうすると木が喜びますので。」という、何とも旅館に対する愛情が感じられる言葉が、とても印象的で、日々こうして大切にされてきた建物を「手入れ」させていただいている気持ちで、こちらまで嬉しくなりました。
17時過ぎに清掃が終わったあとは、まるで野球の攻守が入れ替わるように、お客さんにさま変わり。旅館の方々の温かいおもてなしを受け、温泉をゆっくりと堪能し、美味しい料理をたっぷりと味わい尽くしました。
翌朝、旅館の周りを散策。すぐそばを流れる川にかかっている橋は、映画「わが母の記」のロケ地になった場所だそうです。
「手入れ」と「おもてなし」を引き換えるボランツーリズム。体験して思ったことは、日本に息づく、“お互いさま”の精神です。他者のために何かを尽くすことで、それが自分にとっても糧になる。ボランツーリズムに限らず、人として大切な心持ちだと思います。初対面の方ばかりでしたが、素晴らしい仲間と時を過ごすことができて、とても有意義な時間となりました。来年もぜひ参加したいと思います。
落合楼村上旅館
落合楼村上旅館