2012年10月25日木曜日

伝統の中の“ひとかけら”


遠州地方に古くから伝わる「遠州綿紬 えんしゅうめんつむぎ」の新しい柄が織り上がりました。これまで季節感を軸にした柄の展開はなかったので、季節に合わせた柄の制作を進めていて、今回は「秋茜」「小春」「うぐいす」など、2012年度秋冬の新作となります。

こうした生地の創案に、デザイン監修として携わらせていただいていますが、生活に根づいて生まれた伝統文化には、和歌でいえば「詠み人知らず」のような誰が思いついた柄なのか分からず、それでも時代を超えて愛されてきたものも数多くあります。自分が担っている役割なんて、長い歴史から見ればほんの“ひとかけら”に過ぎません。先人への敬意を忘れずに、次の世代に少しでもいい形でこの文化が受け継がれていけばと真摯に思っています。

タテ縞が特徴の遠州綿紬。縞の幅や色合いを工夫するだけで、どこか懐かしく現代にも融合するデザインに仕上がるのが魅力です。そのさじ加減が難しい面ではありますが、ただ伝統を守るだけでなく、時代をとらえて少しずつ進化していければと思います。