2012年11月29日木曜日

豆のさがみや


東京・品川にある中延(なかのぶ)商店街。その地で創業70年以上になる「豆のさがみや」さん。昔ながらの製法でつくる甘納豆や落花生、おかきが並ぶ老舗です。今回、中延商店街の事務局長、大庭さんとのご縁で、ロゴマーク、パンフレット、ホームページを制作させていただきました。

老舗であるほどデザインにおいて歴史への敬意が大切だと、僕は思います。たとえば、先代からのお付き合いなどで昔からのお客様が多く、大きな変化はお客様に好まれないこともあるからです。その一方「日本の食文化」をこれからも守るためにも攻めの一手が必要で、やはり少しずつ前向きに変化する姿勢が大切なのだとも思っています。
ロゴマークは、歴史を感じさせながらも若い世代に受け入れられやすい印象に仕上げました。「豆」の漢字をモチーフにして、おいしさが二重丸という意味を込めています。マークは、豆を釜で煮るときの様子を模しています。


パンフレットとホームページについては、とにかく素材の良さ、店主の職人としての実直な姿がそのまま伝わるように配慮しました。なにより70年の歴史を持つお店なので、無理に良く見せようとか小手先でデザインする必要などは全くなく「伝えるべきこと」を伝えれば、それが最もふさわしいデザインになると思っています。

今回は縁があって東京での仕事でしたが、東京らしくないというか、中延商店街のほのぼのした雰囲気がなんとも懐かしく、東京の下町の魅力を感じる仕事でもありました。

●豆のさがみや:http://mamesagami.com

2012年11月21日水曜日

ぬくもり工房|ロゴマーク

織物の産地として栄えた遠州地方で、今もなお伝統を受け継ぐ遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)。その遠州綿紬の生地や雑貨を取り扱う「ぬくもり工房」さんのロゴマークをデザインさせていただきました。

由緒あるものを受け継ぐ会社のロゴマークなので、デザインを考えるにあたって、2つのことを大切にしました。1つ目は、古風になりすぎない「和」を感じること。もう1つは、目にした人が温かみを感じること。ロゴマークだけでそれらを表現しきるのは難しいことですが、こうした想いをもとにデザインすることによって、意志が込められた印象に残りやすいロゴマークになると考えています。
デザインはご覧のとおり、神社の鳥居がモチーフです。実は、浜松市の三ヶ日町に、織物の神様とされる織姫様をまつる「初生衣神社(うぶぎぬじんじゃ)」という神社があります。遠州織物の発祥に深くかかわる場所であり、ぬくもり工房社長の大高さんも、その縁をとても大切にしてお参りされている神社です。

神社の鳥居をモチーフにすることに迷いもありましたが、地元の伝統を次世代へと引き継ぐ意志があるからこそ、使わせていただくことにご理解が得られると思い、初生衣神社の宮司さんに了承を得た上で、願いを込めて使わせていただきました。
鳥居の中には、「十二単衣(じゅうにひとえ)のかさね色」に用いられる12色の和の伝統色を使用。遠州綿紬の特徴でもある「縞柄」の彩りをつくりました。来年には大きな動き(挑戦)も控えているので、地元ではこのロゴマークを多くの方が目にするかと思います。

2012年11月15日木曜日

「分かる」と「感じる」は違う

言葉はあくまでも「道具」である。そう思うことがよくあります。言葉の力を過信しすぎると、「分かる」ことや「説明する」ことばかりを重要視して、人間の直感による「感性」の部分を見落としがちになるからです。

たとえば身近なところでは、Googleマップを見て行った気になるのは「分かる」こと。実際に現地に行って街を歩いてみるのは「感じる」ことです。街を歩いてみると、気候や街なみ、現地の人も含めて、その街を好きにことがありますよね。このことはデザインにおいても同じことが言えます。

例を挙げれば、名刺。ご自分で名刺を作ると、言葉で情報を詰め込もうとしがちです。言葉で「分かって」もらいたい。しかし、名刺には言葉のほかに、紙の種類、厚さ、書体、文字の配置、ロゴマークなど、さまざまな要素があり、受け取る側はそれらを総合的に「感じて」いるのです。つまり「私は信頼できる○○です」と言葉で載せるよりも、紙の厚さを厚くするだけで名刺を受け取った相手に「信頼できそうだ」と感じてもらえる可能性があるのです。

そして、「分かる」より「感じる」ほうが、人の記憶にはるかに残ります。

これからの時代は、論理的に長けた人よりも感性が豊かな人が活躍する時代。そして、その感性を支持するファンや顧客によってコミュニティができる。そのような時代にシフトしていくと考えています。

2012年11月8日木曜日

整理力と創造力


仕事柄、いくつものプロジェクトが同時進行することが多いので、頭の整理も兼ねて、週1回はデスク周りの掃除をするように心がけています。目に見えるものが散らかっていると、頭の中もゴチャゴチャしやすく、視覚から受ける影響はとても大きいと日々感じています。

僕の場合、整理をするときには、最もキレイにしたい場所からではなく、最も関係ない場所から整理を始めます。というのも、最近使わなくなったのに居座っているモノが多く、忙しかったりすると「とりあえず置いておく」場所は、たいてい重要ではない場所だからです。Aを片づけたかったら、先にCを片付ける。Cにスペースが空くと、BのモノをCに移動できる。するとBにスペースが空き、AのモノをBに移動できる。このようにC→B→Aと順番に整理すると、部屋全体が整理でき、まるで玉突きのように片付くので、この片付け方を「玉突き整理術」と個人的に呼んでいます。

実はブランディングにおいても、“情報を整理する”ことは、クライアントからお話を伺ったあとに一番初めに行う作業でもあります。情報を整理すると“何を伝えるべきか”が見えてきて、優先順位がはっきりするのです。

デスク周りも頭の中もスッキリ整理しておくと、そこにスペース(余白)ができる。この余白こそが、自分の中で創造力を働かせるのに最も大切だったりします。