2013年1月24日木曜日

聞く、伝える、精度

最近、デザインの打ち合わせで、「外山さんがデザインを考えるんですか?」と、驚かれることが多い。もちろん、回答は「はい、考えます。」なのですが、実はこのような問いかけの中に、広告・デザイン業界が抱えている問題がひそんでいるのです。

まず、皆さんがデザインを発注するとしたら、選択肢は、広告代理店、デザイン会社、印刷会社、ネット注文、いずれかに当てはまると思います。しかし、上記の中で「デザインする人と、直接打ち合わせができる」という条件に当てはまるケースは、実は少数派なのです。多くの案件を手がける、広告代理店や印刷会社は、規模の大小はあれど組織であり「営業」の方がいます。チームを組むプロジェクトなど、クリエイターが打ち合わせに同行することもありますが、基本的には営業の方が窓口となります。

そのような場合、打ち合わせの「聞き手」と、デザインの「作り手」は違います。しかし、打ち合わせでは、話す表情やしぐさなど、言葉だけでは伝わらない微妙なニュアンスが含まれています。営業からクリエイターに、よほど事細かく状況や要望を伝えない限り、そこに誤差が生じてしまうのです。デザインの打ち合わせは、ただ用件を聞くのではなく「人の想いを預かる場」です。想いは目に見えませんから、神経を集中して、言葉や表情から感じ取る必要があります。つまり、話を聞くことにも「精度」があるのです。

依頼者としても「デザインする人に直接話す」と、自分の想いが伝わらずにモヤモヤせず、労力を省けます。営業→クリエイターと伝言ゲームのように、本来の主旨が伝わらずに期限だけが迫って、満足いかないものを作ったケースも耳にします。組織が悪いというわけではなく、聞くこと、伝えることにも「精度」があり、デザイン業界に限らず、伝言ゲームはいたるところで、誤差を生んでいるのではないのでしょうか。こうしたことから、コミュニケーションツールの発達もあり、近い将来、「直接伝えること」の価値が見直されてくるのではないかと思っています。

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