2012年12月20日木曜日

印刷物は、無くなるのか。

iPadやKindleなど、電子書籍端末の普及にともない、「紙」の印刷物はこれまでにない危機を迎えようとしています。デジタルと紙。うまく棲み分けて今後も同じようなシェアで共存していくのか、それともデジカメがカメラの主流になったように(最近ではスマホに奪われつつある)電子化の波にのまれていくのか。

デザインにおいてもパンフレット、名刺、ポスターなど、
まだまだ紙媒体は多数を占めています。しかし、そもそも紙媒体が日本で普及した歴史をよく知らないので、「紙に印刷すること」の意義を考えるために、印刷博物館に立ち寄ってみることにしました。ちょうど「印刷都市東京と近代日本」という企画展を開催していて、日本における印刷の歴史を「点」ではなく「線」として知ることができました。
ヨーロッパで木版印刷機が登場して、日本に伝わったのが18世紀。日本でも木版印刷機で挿絵を刷ることが可能となりました。1774年に印刷された解体新書』をはじめ、幕末から文明開化にかけて、政治と経済に関するもので印刷物が爆発的に普及したそうです。その後、自由民権運動で高まる言論活動やジャーナリズムで、印刷の種類と部数は大幅に増えたということです。

1890年には日本の議会開設にともない、写真製版が実用化。イギリス発祥の輪転印刷機が導入され、1000年以上にわたり日本の印刷の主流だった木版印刷が衰退していくことになったそうです。2000年以降は、デザインにおいてもパソコンでレイアウトすることが主流になり、印刷を取り巻く環境はデジタル化がいっそう進みました。

これらの流れを把握しながら気づいたことは、印刷と政治の関係。やはり政治には「広く伝える」という行為が不可欠であり、その手段として印刷が栄えた側面があるようです。今ではその手段はホームページやTwitterに取って代わられることも多く、政治家、学者、作家、ジャーナリストなど、多くの方々がインターネットを通じて発信をしています。

ということは、電子書籍だけではなく、すでに「伝える」手段はインターネットへ主権が移りつつあるのです。その動きを踏まえて「紙に印刷すること」の長所を考えると、アナログ的な温かさというか、手に取るという行為。そして、印刷物と言うように「物として残る」という点。デザインをする上でも、こうした良さを感じながら1つのツールとして向き合う必要性を感じました。これからも紙の媒体をデザインするときには、印刷物であるメリットを常に考えながら、デジタルとの相乗効果を考えていきたいと思います。